💡 日常のふしぎ 🔋 エネルギー 予備知識なしでOK 読了 約6分

LEDはなぜ、あんなに電気を食わないの?
― 熱ではなく、光を「直接」作っています

昔ながらの白熱電球をLED電球に取り替えると、同じくらいの明るさなのに、消費電力の表示は7分の1程度になることがあります。しかも、しばらく点けていてもLEDは白熱電球ほど熱くなりません。この「電気を食わない」しくみの正体は、光の作り方そのものが、根本的に違うことにあります。

公開:2026.08.21 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、思い出してみてください

白熱電球をしばらく点けたあと、うっかり触ってしまってやけどしそうになった経験はないでしょうか。白熱電球は、点灯中ずっと、かなりの高温になっています。

一方、同じ明るさのLED電球は、長時間点けていても、白熱電球ほど熱くなりません。それでいて、消費電力(ワット数)の表示を見ると、LEDのほうがずっと小さな数字になっています。

同じ「明るさ」を作り出しているのに、なぜこれほど、必要な電気の量が違うのでしょうか。

1
白熱電球は、「熱で光らせて」います

フィラメントを高温に熱し、その熱による発光を利用しています。光になるのは、使った電気のごく一部だけです。

2
LEDは、電子のエネルギーを直接「光に変えて」います

半導体の中で、電子が持つエネルギーを、熱をほとんど経由せずに光に変換しています。

「光らせ方」がまったく違うことが、消費電力の差につながっています。順番に見ていきます。

① 白熱電球 ― まず熱に変え、その一部が光になる 電気エネルギー ほとんど わずかな光 熱の一部だけが、光として外に出ます ② LED ― 半導体の中で、直接ほとんどが光になる 電気エネルギー ほとんど 光(直接) 熱になる分は、わずかです
図1:上(①)は白熱電球のエネルギーの流れ。電気のほとんどが、まず熱に変わり、その熱のごく一部だけが光として放出されます。下(②)はLEDのエネルギーの流れ。半導体の中で、電気のほとんどが熱をほとんど経由せず、直接光に変わります。この違いが、消費電力の差を生んでいます。

白熱電球は、「熱」で光っています

白熱電球の中には、タングステンという金属でできた、細いフィラメントが入っています。電気を流すと、フィラメントの電気抵抗によってフィラメントが2000℃を超える高温になります。

どんなものでも、高温に熱すると光を出すという性質があります。鉄を熱すると赤く光るのと同じ原理です。白熱電球は、この「熱いものが光る」という現象(熱放射)を利用しています。

ただし、熱せられた物体が出す光には、目に見える光(可視光)だけでなく、目に見えない赤外線(熱として感じる光)も、大量に含まれています。白熱電球で使われる電気の多くの割合が、目には見えない赤外線として失われているとされています。触ると熱いのは、この赤外線や熱そのものが大量に出ているからです。

LEDは、電子のエネルギーを直接光に変えています

LED(発光ダイオード)は、まったく違う原理で光ります。LEDの心臓部は、半導体と呼ばれる特殊な材料でできています。電気を流すと、半導体の中で、電子が特定の場所(正孔と呼ばれる、電子が抜けた場所)に飛びこみます。

電子が飛びこむとき、持っていたエネルギーの一部を、光として直接放出します。これを電界発光(エレクトロルミネセンス)と呼びます。熱を経由せず、電気のエネルギーから光のエネルギーへ、いわば「一段階」で変換しているという点が、白熱電球との大きな違いです。

しかも、この放出される光の色(波長)は、使う半導体の材料によって、あらかじめほぼ決まっています。目的の色の光だけを、狙って作り出せることも、LEDの効率の良さにつながっているとされています。

白熱電球は、「熱の副産物」として光を得ています。
LEDは、電子のエネルギーを、光として直接受け取っています。

なぜ、この違いが「電気を食わない」につながるのか

白熱電球では、電気のエネルギーのうち、光になる割合はごくわずかで、残りの大部分は熱として失われてしまいます。同じ明るさを得るには、その分、たくさんの電気を流し続ける必要があります。

LEDでは、電気のエネルギーの多くの割合が、熱をほとんど経由せず、直接光に変わります。もちろんLEDも、抵抗によるわずかな発熱はありますが、白熱電球に比べれば、無駄になる分がずっと少なくてすみます。そのため、同じ明るさを、より少ない電気で作り出せるとされています。実際にどれくらいの差になるのか、次の折りたたみで数字を使って確かめます。

🔎 「明るい」と「熱い」は、別のことです

白熱電球の熱さから、「明るい光ほど熱を出す」というイメージを持っている人もいるかもしれません。ですが本文で見たとおり、熱と光は、必ずしもセットで生まれるものではありません。LEDのように、ほとんど熱を出さずに明るい光を作ることも、原理としては可能です。

自分で確かめられること

🧪 白熱電球とLED電球の「熱さ」を比べる(熱くなった電球には直接触れないでください)
  1. 家に白熱電球(あれば)とLED電球があれば、それぞれを5分ほど点灯させる
  2. 電球のすぐそばに、手のひらを近づけて(触れずに)、熱の伝わり方を比べる
  3. 白熱電球がなければ、店頭で「白熱電球○W相当」と書かれたLED電球のパッケージを見て、実際のワット数がどれくらい小さいかを確認する

白熱電球に近づけた手のひらのほうが、はっきり熱を感じられるはずです。これは、白熱電球が電気の多くを熱として放出していることの、直接的な体感です。

まとめ

白熱電球はフィラメントを高温に熱し、その熱放射の一部として光を得ています。電気の多くは、目に見えない熱として失われます。LEDは半導体の中で、電子のエネルギーを熱をほとんど経由せず直接光に変えています。この「光の作り方」そのものの違いが、消費電力の大きな差につながっているとされています。

LEDが省エネなのは、光を「けちっている」からではありません。
熱という寄り道をせずに、光までまっすぐ向かっているからです。

もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」で習う範囲
  • 高校+高校の「物理」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(半導体工学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:LEDと電球をめぐる言葉

高校式で確かめる:LEDが出す光の色は、なぜ材料で決まるのか

LEDが出す光の色(波長)は、半導体の中で電子が飛びこむときに放出するエネルギーの大きさによって決まります。光のエネルギーと波長の関係を使って、実際にある波長の光がどれくらいのエネルギーを持つかを計算してみます。

① まず、式そのもの

光子のエネルギー = プランク定数 × 光の速さ ÷ 波長

光子のエネルギー単位は J(ジュール)
プランク定数およそ 6.63×10⁻³⁴ J・s という、決まった値
光の速さおよそ 3.00×10⁸ m/s
波長単位は m。赤色LEDの光は、およそ630nm(6.30×10⁻⁷ m)程度とされています

これは、光を粒(光子)として見たときに、その1粒が持つエネルギーを求める、よく知られた関係です。波長が短い(青っぽい)光ほど、1粒あたりのエネルギーは大きくなります。

② 赤色LEDの光で、実際に計算してみる

プランク定数と光の速さの積は、あらかじめ計算するとhc ≒ 1.989×10⁻²⁵ J・mになることが知られています。この値を、赤色LEDの波長で割ります。

hc を波長で割る(1.989×10⁻²⁵) ÷ (6.30×10⁻⁷) ≒ 3.157×10⁻¹⁹
光子のエネルギー約 3.16×10⁻¹⁹ J

この値は小さすぎて実感しにくいため、電子1個を1ボルトで加速したときのエネルギー(電子ボルト、eV)という単位に直してみます。1eVはおよそ1.602×10⁻¹⁹ Jです。

eVに変換(3.157×10⁻¹⁹) ÷ (1.602×10⁻¹⁹) ≒ 1.97
光子のエネルギー(eV換算)約 1.97 eV

赤色LEDに使われる半導体材料の、電子が飛びこむときに失うエネルギーの大きさ(バンドギャップ)は、およそ1.9〜2.2eV程度と報告されており、今回の計算結果とよく近い値になっています。波長(色)を指定すれば、そこから必要なエネルギーを求められることが確かめられました。

※ 実際のLEDの発光波長やバンドギャップの値は、材料の種類や製法によって幅があります。ここでは代表的な目安の数値を使っています。

高校+白熱電球は、なぜ効率が悪いのか(黒体放射)

高温に熱した物体が出す光の量と色の分布は、黒体放射と呼ばれる理論でよく説明されます。温度が上がるほど、放射される光の量は増え、ピークの波長は短く(青っぽく)なりますが、白熱電球のフィラメント程度の温度(2000〜3000℃程度)では、放射のピークはまだ目に見えない赤外線の領域にあるとされています。つまり、フィラメントをどれだけ工夫しても、原理的に多くのエネルギーが目に見えない熱として出てしまうという制約があります。

大学直接遷移型半導体と、間接遷移型半導体

LEDに使われる半導体(ガリウムヒ素やガリウムヒ素リンなど)の多くは、直接遷移型と呼ばれるタイプで、電子が正孔に飛びこむときに、効率よく光を放出できる性質を持っています。一方、シリコンのような間接遷移型の半導体は、電子が光を出すためには余分な過程が必要になり、発光の効率が非常に低いとされています。身近なコンピューターの多くがシリコンでできているのに、LEDには別の半導体材料が使われているのは、こうした違いが理由の1つです。

研究まだ、はっきりしていないこと

LEDはすでに広く普及した技術ですが、効率をさらに高めたり、新しい材料を実用化したりする研究は、いまも続いています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・電気とエネルギーフィラメント・半導体・ワットの基本用語
高校物理・光の粒子性光子のエネルギーと波長の関係の計算
高校+物理・熱放射黒体放射と白熱電球の効率の限界
大学半導体工学直接遷移型・間接遷移型半導体の違い
研究光工学(研究中)効率ドループ、ペロブスカイトLED、マイクロLED
参考・出典
  1. 照明工学関連の教科書における、白熱電球とLEDの発光原理の比較解説。
  2. 半導体工学関連の教科書における、電界発光(エレクトロルミネセンス)とバンドギャップの解説。
  3. 資源エネルギー庁「LED照明の省エネ効果」に関する解説資料。
  4. Schubert, E. F., Light-Emitting Diodes(LEDの発光原理・効率ドループに関する代表的な専門書)。
  5. 物理教科書における黒体放射・プランクの法則の解説。

※ 波長・バンドギャップ・効率などの数値は代表的な目安であり、実際の製品や材料によって幅があります。

※本記事は一般向けの科学解説です。電球・LED製品の性能や省エネ効果の詳細については、各製品のパッケージ表示や、資源エネルギー庁など公的機関の情報をご確認ください。